セメント瓦とモニエル瓦はどちらもセメント系の屋根材で素材そのものには防水性がないため、屋根塗装によるメンテナンスが必要です。
どちらも見た目は似ていますが、モニエル瓦の場合、高圧洗浄時にスラリー層を完全に除去しなければならず、専用の塗料での再塗装が必要になるため、正確に見分けなければなりません。
セメント瓦とモニエル瓦の屋根塗装やメンテナンス方法について解説します。
セメント瓦とモニエル瓦は屋根塗装が必要
セメント瓦とモニエル瓦はどちらも屋根塗装が必要です。
見た目はどちらもかなり似ているため、塗装方法に大差ないと思われがちですが、実は、メンテナンスの方法が大きく異なります。
そのため、屋根の素材がセメント瓦とモニエル瓦のどちらなのか見極めることが大切です。
セメント瓦とは
セメント瓦は、セメントと川砂を混ぜて成形した瓦です。
これだけでは防水性がないため、その表面に塗装することで防水性を維持しています。
価格が安い割には耐用年数が30〜40年ほどあるため、耐久性の面でも優れています。
そのため、1970年代頃には、コストパフォーマンスと耐久性の良さから、瓦屋根の代わりに広く使われていました。
ただ、1980年代後半にはセメント瓦よりも軽い屋根材が出回るようになり次第に使われなくなっています。
現在では新規にセメント瓦を用いることは殆どありません。
モニエル瓦とは
モニエル瓦はセメントに砂利を混ぜたコンクリートの瓦です。乾式コンクリート瓦とも呼ばれています。
ヨーロッパが発祥の瓦ということもあり、洋風の屋根に利用されていることが多いです。
セメント瓦と似ていますが、表面の処理に特殊な方法が用いられています。
モニエル瓦には、着色スラリーと呼ばれる着色剤が塗られており、スラリー層と呼ばれる層が形成されています。
再塗装の際は、着色スラリーがあることを意識しないと施工不良となってしまうため注意が必要な屋根材です。
セメント瓦とモニエル瓦の見分け方
セメント瓦とモニエル瓦はよく似ているため、どちらなのか見極めることが非常に重要です。
まず、モニエル瓦は、ヨーロッパが発祥の瓦ということもあり、洋風の屋根の形をしていることが多いです。
そのため屋根の形が洋風であれば、モニエル瓦の可能性が高いと言えます。
ただ決定的な要素ではありません。
セメント瓦とモニエル瓦の大きな違いは、小口(断面)です。
モニエル瓦はコンクリートが主成分で砂利を含んでいることから、小口がザラザラしています。
それに対して、セメント瓦は、滑らかなのが一般的です。
屋根に上って間近で観察したり触ることによって見分けることができます。
セメント瓦とモニエル瓦の劣化症状
セメント瓦とモニエル瓦はどちらも表面の塗膜により防水性を維持しています。そのため、表面に劣化症状が表れたら屋根塗装が必要になります。
セメント瓦とモニエル瓦の劣化症状の代表例を紹介します。
色あせ
新築から10年ほど経過することにより、瓦の表面が色あせてきます。
屋根は日々、直射日光や紫外線を浴び続けていますし、風雨にさらされて過酷な環境下にあるためです。
色あせの段階では、セメント瓦とモニエル瓦の素材には大きなダメージが手でいないのが一般的です。
そのため、この段階で再塗装しておけば、素材の劣化を抑えながら長持ちさせることも可能です。
カビやコケ
瓦の表面の塗膜の劣化が進むと防水性が失われます。
すると、雨が降った後で、瓦の表面が湿った状態になり、カビやコケの胞子が付着して、根付きやすくなります。
そのため、よく観察すると、瓦の表面に黄色や茶色のブツブツしたものが常に付着している状態になってしまいます。
このブツブツしたものがカビやコケです。
カビやコケを放置しているとやがて瓦の内部に向けて根を張るようになりますから、瓦自体が脆くなってしまいます。
瓦が脆くなるとひび割れなども発生しやすくなってしまいます。
ひび割れが生じていなければ、この段階で再塗装することで、瓦を長持ちさせることも可能です。
ひび割れや欠落
瓦の表面の防水性が失われると、雨が降ったときに水分を吸い、晴れた日は蒸発することを繰り返します。
セメントは水分を吸うことで膨張し、乾燥することで収縮するため、ひび割れが発生しやすくなります。
一旦ひび割れが発生すると、日々が広がってやがては完全に欠けてしまい、破片が脱落してしまいます。
こうなると、屋根に穴が空いている状態になるのて、雨漏りの大きな原因になってしまいます。
ひび割れや欠落が生じている段階になると、状況によっては屋根塗装では対処できないため、屋根の葺き替え工事も検討しなければなりません。
セメント瓦とモニエル瓦の屋根塗装方法
セメント瓦とモニエル瓦の屋根塗装の工程は似ています。
ただ、モニエル瓦の場合は、洗浄段階で注意すべきことがあります。
セメント瓦とモニエル瓦の屋根塗装の工程を確認しましょう。
セメント瓦の屋根塗装方法
セメント瓦の屋根塗装の流れは次のとおりです。
☑高圧洗浄
☑下地処理(補修)
☑下塗り
☑中塗り
☑上塗り
まず、高圧洗浄機によって、屋根の汚れをすべて除去します。
屋根の汚れが残っていると、その汚れとともに新しい塗装が剥離してしまうためです。
カビやコケが根付いている場合は、高圧洗浄だけでは落とせないこともあるため、ケレン作業により削り落とします。
下地処理は、傷んでいるセメント瓦を補修する作業です。
ひび割れている瓦は、コーキング材を充填することで補修できることもあります。欠落の状況によっては、その部分だけ交換が必要なこともあります。
セメント瓦のズレがある場合も一つ一つ丁寧に直します。
屋根塗装では、高圧洗浄と下地処理の段階が重要な工程になります。
施主が直接確認することは難しい場合がほとんどですが、職人にこの工程を終えた直後の屋根の状態を撮影してもらうなどして、しっかり汚れが落とせているか、補修できているか確認しましょう。
下塗りは、セメント瓦の補強と中塗り、上塗りの塗料が接着しやすくするために行います。
セメント瓦の劣化の状況によっては、塗料を吸い込みやすい状態になっていることもあるので、2回以上下塗りが必要なこともあります。
中塗りと上塗りは、仕上げの塗料を塗る段階です。
1回だけでは塗りムラになるので中塗りと上塗りと2段階に分けて塗ります。
広い面はローラーで塗り、細かいところは、刷毛で塗ります。
モニエル瓦の屋根塗装方法
モニエル瓦の屋根塗装の流れは次のとおりです。
☑高圧洗浄
☑下地処理(補修)
☑下塗り
☑中塗り
☑上塗り
工程は、セメント瓦と基本的に同じです。
ただ、高圧洗浄の段階で、スラリー層を完全に取り除かなければならない点が大きく異なります。
スラリー層は、通常の塗膜よりも固いため、高圧洗浄の際に通常よりも水圧を高くして作業する必要があります。
高圧洗浄だけで取り除けなかったスラリー層は、ケレン作業により削り落とします。
この段階でスラリー層をしっかりと取り除いておかないと、その上に新しい塗料を塗っても、脆くなったスラリー層と一緒に剥がれてしまうため注意が必要です。
なお、スラリー層の除去作業では、汚れた水がかなり出てしまうため、近隣に飛び散らないようにしっかりとシートを張り巡らすなどの養生作業も大切です。
また、モニエル瓦に使える塗料は限られています。
下塗り、中塗り、上塗りの段階でも、モニエル瓦専用の塗料を使わなければなりません。
屋根塗装以外のメンテナンスの方法
セメント瓦とモニエル瓦が使われている家はすでに、築30年から40年程度経過しているのが一般的です。
そのため、劣化が著しく、塗装によるメンテナンスでは対応できないこともあります。
この場合は、屋根の葺き替え工事が必要になります。
なお、現在では、昔のセメント瓦やモニエル瓦は生産されていないため、同じものに葺き替えることはできません。
また、セメント瓦やモニエル瓦はいずれも重量があり、耐震面では不利な屋根材です。
今では、ガルバリウムの金属屋根のように、軽量で長持ちする屋根材が主流となっています。
そのため、劣化が著しい場合は、セメント瓦やモニエル瓦を撤去したうえで、屋根の下地の野地板や防水シートも張り替えたうえで、新しい屋根材で葺き替えることも検討してください。
塗装か葺き替えかの診断は誰に依頼すべきか?
塗装か葺き替えかの診断は、屋根塗装を行っている塗装業者に依頼するのが最善です。
屋根工事業者でも診断はできますが、屋根工事業者は葺き替えをしないと儲かりませんので、葺き替え工事が必要とウソを付くこともあるかもしれません。
塗装業者はまず塗装によるメンテナンスを検討しますが、屋根の状態から塗装が難しい場合は、葺き替えしないと無理だと正直に話します。
塗装でメンテナンスできないのに塗装すると、直ぐに駄目になってしまい、クレームになるからです。
そのため、塗装か葺き替えか判断できない場合は、まず、屋根塗装を行っている塗装業者にご相談ください。
まとめ
セメント瓦とモニエル瓦は屋根塗装によるメンテナンスが必要な屋根材です。定期的に塗装していれば長持ちしますが、葺き替え工事が必要になっているケースも少なくありません。
弊社は江戸川区を中心に地域密着で塗装工事を行っています。
セメント瓦とモニエル瓦の塗装の依頼もお受けしていますし、塗装か葺き替えかのご相談にも応じています。
お客様のお宅の屋根に合わせた最適なメンテナンス方法を提案させていただきますので、お困りのことがあれば、いつでも弊社にお問い合わせください。