一般的なコロニアル、スレート屋根、セメント瓦は、塗装によって防水性能や耐久性を維持しているため、劣化症状が確認されたら早めに塗装工事を行うべきです。
ただ、1990年後半から2004年頃に製造販売されたノンアスベストの屋根材は、10年程度で劣化が始まり、現在残っているとしても、塗装ができない状態になっている可能性があります。
塗装ができないとされる屋根材の代表例と塗装できない屋根のメンテナンス方法について解説します。
塗装できる屋根材とは?
瓦屋根以外の屋根材は基本的に塗装できます。
例えば、
✅コロニアル、スレート屋根
✅セメント瓦
✅金属屋根(トタン、ガルバリウム)
などです。
ただ、これらの屋根材でも塗装できないものもあるので注意が必要です。
特に、コロニアル、スレート屋根、セメント瓦は、塗装できない場合があります。
塗装できない屋根とは?
塗装できない屋根とは正確にいうと次の意味になります。
人が上がるだけで屋根材が割れてしまうため、塗装できない。
劣化が早いため、塗装しても意味がない。
そのため、塗装するだけでお金の無駄になる。
コロニアル、スレート屋根、セメント瓦の中には、製造時期によっては、大変脆く、耐久性が低い商品があります。
運悪く、そうした製品を屋根材に使っている場合は、職人が屋根に上がることが難しいですし、元々脆い屋根材に塗装しても強度が高まるわけではないため、塗装するだけお金の無駄ということになってしまいます。
塗装できない屋根が製造されたのはいつなのか?
塗装できない屋根とされる脆い屋根材が作られるようになった時期は、石綿(アスベスト)の使用が禁止された時期と重なります。
それ以前のコロニアル、スレート屋根、セメント瓦には、石綿(アスベスト)が含まれているために、強度が高かったわけですが、石綿(アスベスト)の使用禁止前後にメーカーが製造した製品は、大変脆く、耐久性が低いものになってしまいました。
その後、改良が進み、現在では、石綿(アスベスト)なしでも耐久性の高い商品が流通しています。
時期的には、1990年後半から2004年頃に製造販売されたコロニアル、スレート屋根、セメント瓦は脆い製品が多いため、この時期に新築された住宅の屋根材は、塗装ができない可能性があります。
塗装できない屋根の具体例
1990年後半から2004年頃に製造販売されたコロニアル、スレート屋根、セメント瓦のうち、塗装できない屋根材の代表例を紹介します。
コロニアルNEO
クボタ(現:ケイミュー・KMEW)が2001年から2008年頃まで製造販売していたノンアスベストスレート屋根材です。
現在も屋根材でコロニアルNEOを使っている場合は、残念ながら塗装は難しいことがほとんどです。
コロニアルNEOは、脆く耐用年数は10年程度しかありません。
現在残っているとしたら既に多数のひび割れが生じており、欠けて、脱落している部分もあるはずです。
コロニアルNEOの変色や色あせ、カビや苔の発生が確認できる場合でも、再塗装は難しいです。
パミール
ニチハが1996年から2008年頃まで製造販売していたノンアスベスト屋根材です。
パミールの耐用年数は10年程度しかなく、10年も経つと「層間剥離」といい、瓦の表面がクロワッサンの皮のようにぼろぼろ剥がれる現象が生じ始めます。
既に隔離が生じてしまったところに塗装したところで意味がありませんし、一枚でも剥離しているのであれば、他の部分も早晩、層間剥離が生じる可能性が高く、そこだけ交換しても意味がありません。
現在残っているとしたら既に多数の部分で層間剥離が生じていて、とても再塗装できる状態ではないと考えられます。
ザルフ・ザルフグラッサ
クボタ(現:ケイミュー・KMEW)が、1997年〜2006年頃に製造・販売していたノンアスベストスレート屋根材です。
やはり、耐用年数は10年程度しかなく、10年も経つとひび割れが生じ始め、欠けや脱落が生じるようになります。
現在、変色や色あせ、カビや苔の発生が確認できる場合でも、再塗装は難しいです。
アーバニー
クボタ(現:ケイミュー・KMEW)が、1982年から2005年まで製造販売していた高級感のあるスレート屋根材です。
販売時期によって、石綿(アスベスト)の含有量が異なっており、初期に発売されたものは、石綿(アスベスト)を含んでいるため頑丈である可能性があります。
一方、1994年以降に販売されたものは、石綿(アスベスト)の含有量が少なくなっており、耐用年数も短くなっています。
製品名では、
1994年から2001年に製造販売された「ニューアーバニー」は、アスベストの含有率が段階的に引き下げられている製品です。
2001年から2005年に製造販売された「アーバニーグラッサ」は、ノンアスベストスレート屋根材です。
いずれにしても10年も経つとひび割れが生じ始め、欠けや脱落が生じるようになります。
現在、変色や色あせ、カビや苔の発生が確認できる場合でも、再塗装は難しいです。
レサス
松下電工(現:ケイミュー・KMEW)が1999年~2006年まで、ピュアベスト(900シリーズ)として、製造販売していたノンアスベストスレート屋根材です。
ピュアベスト(900シリーズ)はいくつかの種類がありますが、「レサス」の名前が付くものがノンアスベストスレート屋根材です。
・レサス(1999年~2006年)
・レサス・ウーノ(レサスDX)(2001年~2006年)
・レサス・トレス(2003年~2004年)
・レサスTX(2002年~2003年)
・エコ・ウーノ(レサスECO18)(2002年~2006年)
いずれの製品でも、10年も経つと反りやひび割れが生じ始め、欠けや脱落が生じるようになります。
グリシェイドNEO
クボタ(現:ケイミュー・KMEW)が2001年ごろに製造販売したノンアスベストスレート屋根材です。
10年も経つと反りやひび割れが生じ始め、欠けや脱落が生じるようになります。
また、層状剥離といい、素材の内側から剥がれる現象が生じることもあります。
セキスイかわらU
セキスイかわらUはセメント瓦の一種で、セキスイルーフテック(積水屋根システム)が1970年から2007年まで製造販売していました。
1975年〜1990年に製造されたセキスイかわらUには、アスベストが約10~15%含まれています。アスベストを含んでいる点に問題がありますが、一方で、耐久性が高い製品でした。
1990年から、ノンアスベストのセキスイかわらUが販売されるようになりましたが、販売から間もなくして、塗膜の剥がれ、瓦自体のひび割れ、基材の崩れといった不都合が報告されるようになり、2007に製造が中止されました。
劣化症状がひどいために塗装できない屋根
上記までに紹介した屋根材以外でも劣化症状がひどい場合は、塗装しても意味がないため、事実上塗装できないこともあります。
具体的には、屋根が次のような劣化症状にまで進んでいる場合です。
屋根材のひび割れや欠け、剥離が広範囲に広がっている
屋根材にひび割れや欠け、剥離がある場合は、その隙間から雨水がしみこんでいます。
屋根材の下には防水シートが敷かれているため、直ちには雨漏りにつながるわけではありませんが、長く放置すると浸水が進み、やがては室内での雨漏りにつながります。
屋根材のひび割れや欠けは、コーキングや接着剤でふさぐことも可能ですが応急措置に過ぎません。
根本的に屋根をメンテナンスするならば、塗装ではなく、屋根材の交換等の工事が必要です。
屋根材が錆びて穴が開いている
トタンやガルバリウム鋼板などの金属屋根は、錆びることもあります。
錆びただけであれば、錆を落として再塗装することができますが、錆が素材の奥まで広がっていて、穴が開いている状態になると、塗装だけではどうにもなりません。
金属屋根を交換するか、穴をふさぐための板金工事が必要になります。
塗装できない屋根のメンテナンス方法
塗装できない屋根は塗装したり、欠けているところだけ修理すると言った形でメンテナンスすることは難しいです。
修理するために人が屋根に上がっただけで、屋根材が体重の重みで割れてしまう可能性があるためです。
こうした屋根材をメンテナンスする場合は、次の2つの方法しかありません。
✅屋根カバー工法
✅屋根葺き替え工事
屋根カバー工法は、古い屋根材の上に、新しい屋根材を被せてしまう工法です。
具体的な工事手順としては、古い屋根材の上に防水シートを張り巡らしたうえで、その上に軽い金属屋根等を葺きます。
防水シートと金属屋根の2種類の防水層が追加されるため、雨漏りに対しては非常に強くなります。
この工法では、古い屋根材を撤去して、下地調整や防水シートの張り直しといった作業を行う必要がないため、工期が短くて済むというメリットがあります。
古い屋根材の状態が比較的良い場合は、屋根カバー工法が適していると言えます。
屋根葺き替え工事は文字通り、古い屋根材と防水シートを撤去し、野地板も傷んでいる場合は張り直した上で、一から、屋根工事を行う工法です。
屋根を完全に新調する工事なので、工期は長めになります。
ただ、古い屋根材を撤去するため、その分、屋根が軽くなりますし、金属屋根以外の様々な屋根材を選択することが可能になります。
まとめ
塗装が必要なコロニアル、スレート屋根、セメント瓦、金属屋根(トタン、ガルバリウム)でも、製造年代によっては、塗装できない屋根もあります。また、屋根の劣化がひどい場合も塗装だけでは意味がないため、屋根カバー工法や屋根葺き替え工事などを検討する必要があります。
弊社は江戸川区を拠点に、地域密着で屋根や外壁などの塗装工事を行っております。
屋根の塗装工事に先立ち、塗装できない屋根であることが分かった場合は、その旨をご説明したうえで、対策について提案することもできます。
これからも地元の方の期待に応えられるようより高い技術と知識を会得していく次第です。屋根塗装に関してお困りのことがあればいつでもお問い合わせください。